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非現実都市 戯曲版


   
━━━━目次━━━━
オープニング
第 1 章
第 2 章
第 3 章
第 4 章
最 終 章
エンディング
--------------------
キャラクター紹介
ふりがな並べ
注解

オープニング

<選択肢:「オープニングを 見る/見ない」。見ない場合は第1章まで飛ぶ>

■『作った証拠』

 その頃、■■■■■は腐市に住んでいた。
 ある日、腐市警察が突然、家宅捜査を行った。
 身に覚えのない凶器やメモが次々発見されて、証拠物品として押収されていく。
 父は、警察に書類を見せられ、ハンコを押すように指示されていた。
 だが、■■■■■は見逃さなかった。
 証拠物品として回収された物のほとんどは、警察が持ち込んだカバンや懐《ふところ》から取り出したものであることを。
 しかし、警察は■■■■■を殺気を含んだ目で睨んでいた。
 身の危険を感じ、声が出なかった。

(腐市警察官を以下、Kと表記)
K「これだけの物が発見されたとなると、貴方を疑わざる得ません」
父「……、どれもこれも、初めて見るものばかりなのですが……」
K「そうですか……、とにかく詳しい話を聞かせてください……署の方で」
父「……」
■■■■■「まって」
K「ああん?」
 あからさまに、Kは■■■■■を睨んだ。

■■■■■「(証拠品を指差す)そこにあるのはぜんぶ、この人たちが、ここから(上着の中に手を入れる仕草をする)出してた」

父「――と、言う事らしいですが、どういうことでしょう?」

K「一応、それについても調べておきますが……、結局のところ、子供のおっしゃる事である事を忘れないようにしてください。望みは薄いです」

 父は連行された。家を出て行く際、警察官の一人が■■■■■の横を通り過ぎる時、チッ、と、舌打ちした。それと別の警察官から、わずかにツバもかけられた。■■■■■はじっと相手の顔を睨んでいた。

<暗転>

 父は重罪とされた。その地域の麻薬売買のボスという事にまで、話を捏造《ねつぞう》された。のちに母も同罪とされた。
「処刑には人間缶への利用を検討する」
と、よく分からない事を裁判官は言っていた。

 刑務所に入れられていた父母だが、その後、どこかへ連れて行かれた。

■『人間缶』

 人の心が荒んでいく社会の片隅で、人が次々消えていく。
 「人間缶」という食用肉が出回るが、その出所からは皆、目を背けている。
 父母がいなくなった時、それに人間缶が関係あるという噂《うわさ》を聞く。そこで裁判官がそんな事を言っていたなアと思い出し、人間缶製造工場へと足を踏み入れる。

 そこでは、主に仕事を失い路頭に迷うヒトが集められ、屠殺《とさつ》され、食肉缶詰にされていた。――そういう工場であり、その缶詰こそ「人間缶」であったと知る。

 工場長のもとへ詰め寄る。そして言う、父と母を返せ、と。
 出てきたのは、ただの人間缶だった。

 まさかとも思ったが、やはりとも思った。混乱する。
 ■■■■■は心底怒り、工場長をぶん投げた。
 ミキサーのような機械へと落ちた工場長は、身体がバラバラになり、無残な光景となった。

 力なく、工場を後にする■■■■■。
 自宅に帰るが、何をする訳でも無く、寝そべり、天井を見上げたまま動かない。

 しばらくたって、インターホンが鳴る。
 出ると、警察がいて、すぐさま手錠がかけられた。

「人間缶製造工場の工場長を、貴方は殺しましたね? ――殺人罪です」

■■■■■はこう言った。

「私の父と母が殺されました。他にもたくさん……。あちらは大量殺人犯です」

警察が、最後にこう答えた。

「ああ、あれは食肉扱いになりますから」


<場面転換、背景:刑務所風の建物、もしくは暗転。1.5秒待つ>

<鉄格子を閉める音。と同時に暗転>

    NEXT

■『腐市刑務所 壊滅』

<場所:腐市刑務所>

 腐市刑務所、夜。
 雷が鳴る。風が吹き、豪雨。
 暗闇の中の銃声。
 物陰から、■■■■■がじっと身を潜めて眺めている。

<画面全体、白色フラッシュ、2回>

 銃撃戦が行われているらしい。
 暗くて、発砲時に漏れる閃光しか見えないが、多分、少人数の相手に対し、多人数で攻めているのは分かった。

 次々、射殺され、うめき、倒れ続けた。
//血飛沫《ちしぶき》は白で表現

 やがて静かになる。
 ただ一人生き残った者がゆっくり歩いている。

<暗い中で画面手前の方だけ、死体らしき物が若干《じゃっかん》見える>
<歩いている人影は、奥の方にあり、右から左へ進んでいる>

 稲光で、突如辺りの光景がはっきりする。
<雷が鳴った一瞬で止まる。画面を明るくする>

ノロ「……」

<辺り一面の死体、そしてノロの姿が確認できる>
<1秒後、暗転>

<場面転換:林の中>
 ■■■■■は死に物狂いで逃げていた。脱出の好機だった、ノロが現れてくれたのは。
 だがその時の■■■■■は脱走という考えも忘れ、ただただノロから出来る限り逃げたいという思いだけだった。
■■■■■(怪物?……化け物……? 人間の……化け物……!!)

<タイトル画像フェードイン、フェードアウト>

第1章:閉塞

■『自室』

//メフィスト視点。プレイヤー操作開始。自室からは仮想空間(ゲーム内)または夢の中へ移動できる

<効果音:扉が強く閉まる「バダン!」>

<音と同時に、自室が映る>

 ここはメフィストの自室。今メフィストは扉に背を向けて佇《たたず》んでいる状態で、意識がはっきりした。
 自室に入り、自分で扉を閉めたらしい――。
 振り向き、その扉を開けようと手を伸ばす。だが開かない。取っ手は回るようだが、動くのはそこまでであり、扉は開かない。

<効果音:開かない扉「ガチャンガチャン」>

//ゲーム中では、ここからプレイヤーの操作可能状態になる。説明文の表示は無い。操作可能を示す為、黒のフラッシュを入れる。

メフィスト(鍵も付いていないのに……)

 すんなり諦めた。部屋を見回す。

 目に付くものは、ゲーム機とテレビ、ベッド、パソコンくらい。テレビからは時折、チリチリと火花の飛ぶ音がしていた。
パソコンには「メール」がたまに受信される。「インターネット」で一部サイトが見れる、かもしれない。

テレビに映し出されるゲーム画面は、どことなくインベーダーゲームのようだった。


<ゲーム機を選択すると選択肢:「ゲームスタート」/「いや、まだ」>
<「ゲームスタート」を選んだ時、以下へ>

<素早いフェードアウト。タイトル画面「愚人の街」。そしてホワイトアウト(白画面へフェード)>

//"選択"というのはゲーム操作上で、多少に向かって決定ボタンを押す事を意味する
//2回目からは、ゲーム機を選択しただけでゲーム内へ移動する

■『街路灯一本道』

<視点:レッドパス>
 街路灯の点滅する一本道に、レッドパスは立っていた。引き返す道は無い。奥へ歩いてゆく。

<メニュー画面での肩書きは「ゲドク社 総統」となっている>

 水銀灯に照らされる明かりと暗闇の間に、おぼろげな幻が流れてゆく。

//まだ不完全なレッドパスを表現する→歩行絵をモノクロにしたり半透明にする
//幻は1箇所だけでなく、分散させる

<幻1の内容>
■■■■■の父「ハバネロ、私達にもしもの事があった時のために、今から言う事を聞いてくれ」
ハバネロ「……」
(以下、"■■■■■の父"を"父"に省略)

<幻2の内容>
父「残された■■■■■を守ってやってくれ。私達がいなくなったら、あとは唯一、ハバネロだけが頼みだ」
ハバネロ「はい、言われなくとも!」

<幻3の内容>
父「ハバネロは、ノロ・ファウストという者を知っているか」
ハバネロ「……はい、名前だけは」
父「ノロ・ファウストは、一部では特殊傭兵と言われ、実力行使のあらゆる依頼を引き受ける。
ハバネロ「便利屋のようなものですか? そう気楽なものではないふうですが」
父「確かにそういうものかもしれん――。主に人間や施設の破壊が対象、という以外は」


<幻4の内容>
父「(メモを渡す) そこに金を預けてある。それとノロへの連絡方法も書いておいた。
 もし■■■■■の命が狙われたら、そのときはノロにその者の排除を依頼してくれ。渡した金が残っている限り。

ハバネロ「排除……て、殺害のこと?」
父「 そのメモは厳重に保管してくれ。ノロと敵対する者へ渡った場合、最悪、お前の命まで危険にさらす事になる……。
 もしそのメモを使う事が、金輪際《こんりんざい》無くなった時には、焼却してくれ。


<最後、出口を出た後>
「ハバネロ……、■■■■■を……、頼む……」

    NEXT

第2章:夕闇

■『サイケデリック・シティ情景描写』

<街路灯一本道を抜け出た次のイベント:サイケデリック・シティのイベント群>

 道を抜けると、そこはネオンがきらびやかに光る街だった。
 排気ガス、スモッグの影響か、見上げても、空は見えずに灰色い。
 路上は煙草のヤニが覆われ、どろどろしていた。街全体に煙草臭い空気が漂う。
 浮浪者たちが道の隅にしゃがんだり、寝転んでいたりしていた。

 ネオンの明るい店の一つに入る(「あるかロイド」という店名の店だった)。とたんに刺激臭。気持ち悪い空気が、肺へ入ってくる。
 店内はフワフワとした羊毛で設《しつら》え、照明はオレンジの光を発している。
 ラベルの無いビンが散乱している。人々はパイプ椅子に寝そべったり、床に転がっていたりした。それぞれ、ビニール袋を持ち、そこから伸びたストローを口にくわえたまま、ぐったりしていた。
 ストロー付きビニール袋を持った一人が、レッドパスに近づき、それを渡した。相手はストローを吸う動作を見せるように繰り返した。
 レッドパスはビニール袋を相手に放り、店を出た。

 廃墟アパートを訪れた。ここはアパートの廃墟、だが人は住んでいる。
 アパート入口付近には、ボロボロの木彫り看板があって、「アル中の里」と書いてあった。
 すぐ隣が、街のゴミ捨て場。すぐ近くに酒場がいくつもある。
 このアパートの住人は、カビ生えの酒、腐った酒、古い酒、売れない酒が捨ててあるのを、ゴミ捨て場からよく見つけて拾ってくる。
 ゴミ捨て場には煙草が点々と生えており、引きちぎって取っていく。葉っぱは日の当たる所へほったらかしにして、適当に乾燥したら、紙くずに巻いて、着火して吸っていた。

 飲み下し、吐いて、吸って、寝て、吐いて、飲んで、寝て、一日が終わる。明日になったらまた同じ事をしている。
 ゴミ捨て場から、伝染病も拾ってくるのか、一部の住人はやがて同様の不調を来たす。
 呼吸も鼓動があるが、目が開きっぱなしで動かなくなり、やがて死に絶える。


<●身体の崩れた年老いた住人のまことしやかな昔話>
 話しかけても無視。「……」
 複数回話しかけると、
「ヒマか? ……なら、ワシの昔話でも聞くか?」
<はい/いいえ>


 かつて勇者と呼ばれたワシは、その当時、病原菌テロを起こす組織を打ち倒すよう、国王から直々に命令された。
 支給された防塵《ぼうじん》服を身にまとい、剣を持ちて、攻め落とした27歳――
 だが、安全第一の絶対安全などとぬかし、念を押されて支給された防塵服は、実際のところ効果が無い欠陥品だった。
 ワシは身体のあちこちが腐ってしまう難病にかかった。見ての通り、今ではそれが悪化して、身体の一部が崩れて無くなっている始末だ……。ただ動く事すら出来ず、こうして口ばかり動かして気を紛らわす、哀れな最期だ……

 話の続きだ。
 国王は、ワシの腐った身体を見て、嫌悪した。報酬の金だけ投げてよこされ、城を追い出されたワシは、新たな働き口を探すため、街のいたる所へ赴《おもむ》いた。
 が、どこもかしこも「腐ったものはどこか行け」と言わんばかりの対応だった。
 諦めず、何百もの就職口にチャレンジした。ところが、その頑張りも、悪い方にしかとられなかった。
 ある時、しつこいと嫌悪した民衆が集まり、一斉にワシ一人に罵詈雑言《ばりぞうごん》で罵《ののし》って来た。「腐ったものはどこか行け」とかいう言葉をな。
 こんな連中ならば助ける事は無かったと、その時、はっきり思った。

 怒りに我を忘れたワシは、勇者の時のクセで、家宅侵入して金品を強奪しまくって、その街から遠く逃げた。


 ここで酒をあおってセキをする。その後あくびをして、灰色の空を見上げている。
 老人の目に涙がにじむ。


……で、どうしたっけかなア。
 そう、その後、東西南北さまざまな街を渡り歩いたが、どこにもワシの居場所はなかった。
 そして最後に行き着いた――というより戻ってきたのがここ――、ワシの変わり果てた故郷《ふるさと》だった。
 このアパートはな、この街で一番最初に建てたアパートで、ワシの家族はここの14号室に住んでいた。
 それが戻ってきた時には、もうこの有り様さ。扉も、壁も、崩れたり無くなったり。部屋ん中は崩れたコンクリートの粉まみれ。
 もう何の面影《おもかげ》も無い、無残な、空っぽの空間だけだった。

 ワシの家族は、行方知れず。というより、それどころかワシの知っている人間はもういなかった。
 それでも、ここに留まっている理由は、――まあこの身体じゃそもそも動けん訳だが――、それだけじゃあない。ここで待っていれば、いつかまた家族と再会できるんじゃないかという希望があるからだ。

 ――と、言うのは、昔の話さ。
 酒を飲んだのか飲んでいないのかすら、ど忘れしていくワシの脳に、そんな希望なんて覚えていられるか。
 今は単に惰性《だせい》でここにいるだけだな。それに、ここ以外にワシの居やすい場所がないもんね。



――住人は今日も酔いどれ状態の一日を過ごす。
  将来は考えない。もう無いものと割り切ったから――

    NEXT

■『誰の為に……』

<疑心暗鬼学園内で起きるイベント>
<場所:疑心暗鬼学園、クラス1−Bの教室>

 廊下に漏れるほどの怒声が聞こえる。

教師A「次までによくやっとけ! 次ッ!!
 ああ、Bだな。今から言う言葉をよく聞け!
『仇も情けも我が身より出る。』
 この意味は? ああ!?

生徒B「……因果応報?」
教師A「違う。それらしい言葉で濁そうとしたろうが、駄目だぞ、B」
生徒B「え……? その、自業自得、というたぐいの意味じゃないんですか?」
教師A「なんだその喋り方は、もっと丁寧に喋れ」
生徒B(……その言葉は、先生自身に自分で言い聞かして欲しい)
教師A「そうだ。自業自得だ。因果応報なんて言ってないで、初めから自業自得だ、と言や、よろしい」
生徒C「同じ意味なんじゃないんですか」
教師A「ああ゛!?」

 教師Aは声を荒げ、生徒を睨《にら》みつける。生徒は、ただただ、危ない人間を相手にしている事を自覚した。

教師A「同じじゃねえぞ。似てるから、試験では気をつけろよ。
 いいか、『アダム、酒も我が身より出る。』、この意味は何かという問題が試験に出てきたとする。そこで『因果応報』なんて書くんじゃねえぞ。0点だからな! 答えは『自業自得』だぞ、わかったな、B! んん? 返事

生徒C(……? この教師は……その話し方で、相手に話が伝わる、と思っているんだろうか)

 ひたすら、教師Aは同意を求めるような声を発していた。


生徒D「あの先生」
教師A「なんだ、質問か? どんどん俺に聞け」
生徒D「『身から出た錆』でも駄目ですか」
教師A「なにがだ? それ食うのか?」
生徒D「いいえ、そういう慣用句は、先ほどの『仇も情けも我が身より出る。』という問題の答えに使っていいんですか?」
教師A「え……? 知らんなア。俺はその言葉、生まれてから一度も聞いた事がないが……? 本当にそんな言葉があるのか? 君? 答えとしては認められないなア……」
生徒D「あの、辞典で調べれば、載っていると思います」
教師A「アア、はいはい、分かった分かった。後で見てみる。
 他に質問は無いな? 遠慮なく言え。無いな?」

 このような憂鬱《ゆううつ》な授業は、何年も続いている。

    *

<場所:居酒屋>
 夜。教師Aは教師Bと酒を飲みながら、話をしていた。
――離れた別の席にレッドパスが座っていた。

 教師Aが、だらりだらりと口を動かし、何かを喋っている。
教師A「俺は、さ。あいつら(生徒達)に丈夫な、へこたれない人間してやりたいと……、心を鬼にして、厳しく教育しようと決めたんだ。
 俺が自分で悪役を買って出たって訳だ。
 生徒から、憎まれてもいい。むしろ憎めばいい。
それがあいつらの為なんだからヨ……」

 教師Bは適当に「うんうん」とか言って、寝息混じりに相槌《あいづち》を打っている。
 身体中にアルコールを巡《めぐ》らして、まだ喋る。

教師A「簡単に自殺、殺人、なんかをしてしまう人間を、俺のクラスから出したくなかった。
 だから社会に出る前に、もっと苦しませ、あがき苦しんで、社会の大抵の事に屈しない、丈夫な人間にしてやりたい。鍛えてやりたいんだ。そう、あくまで俺のやりたいのは「厳しさ」だったんだ。「厳しさ」だから、ひどくても良い……むしろ、ひどい方が良い……
 毎日それをやり続けるのが、俺の生き甲斐だからよ……
 俺を見てみなよ。俺自身そうして生きてきたから、一人前の大人になれた…… そういうもんなんだよ……」

 酒が無くなったのか、氷だけ入ったグラスを、さわがしく振り続けている。
 カランカランカランカランカラン...

レッドパス「…………」
 険しい顔をしている。
レッドパス(ただの愚か者だった、か……)

    *

<場所:住宅街>
 さらに夜が更けた頃、教師Aは居酒屋を出て、帰宅途中の住宅街を歩いていた。
 向こうから、赤いシルクハットをかぶった男が見えた。のみならず、兵士のような迷彩服を着ている。――レッドパスが近づいてくる。
 教師Aは、はっと息を呑む。相手の左手には1mを超す長さの刀が握られていた。

教師A「止めなさい! 君は! いったい、何をするつもりだ!!」
 教師Aは毅然《きぜん》とした態度で接するつもりだったらしいが、ただ声を大きくする事ばかりに一生懸命だった。

 レッドパスとの距離が1m程まで狭《せば》まった時、刀が動いた。
 反射的に教師Aは身体を右に少しそむけた。が、それだけだった。
 刀は教師Aの喉を真正面から斬りつけた。

 ところがなぜか斬れない。
 良く見れば、斬りつけたのは刀の峰の方だった。
 けれども教師Aは倒れた。
 しばらくもがいた後、息の根は止まった。
 峰打ちで相手の気道を潰した様子だ。

レッドパス「……愚か者、排除」

    *

<場所:疑心暗鬼学園、クラス1−Bの教室>
 教師Aが亡くなり、別な教師が代わりを担当する事になった。
 にも拘《かかわ》らず、似たようなクラスから、似たような怒声が轟《とどろ》いていた。

    NEXT

■『最大の敵は仲間』

<疑心暗鬼学園内で、うつむいたZ(■■■■■の友人)を選択すると起きるイベント>
//↑イベント発生条件は仮のもの。実際にはどれも未定。

−1−
 ショッピングモールで、■■■■■とBとCの三人組、一緒に歩いている。
 いつも、いつも、楽しそうに。
<楽しんでいる光景、モノクロの静止画でいくつか表示;未定>

 ところがある日、いつも笑顔を絶やさないBが真顔になった。そして登下校の時も、一緒だったBとCだが、そのころから■■■■■と距離を置くようになった。
//文字を使わず、顔絵および歩行絵のみで表現

 そして休日、いつものように三人でショッピングモールを歩いていた時の事、唐突に■■■■■の方を向いて、Bはつぶやく「ベベベプププ」。何を言ったのか分からず、■■■■■は聞き返す。
 そのとき、Bが怒り狂った醜い顔へ豹変した。

B「ババペペブブブボババラバババピピピ!!」
 Bは奇声を発して、嘲笑していた。そして、■■■■■の顔を平手で叩く。
 よろめき、Cの方へ倒れる。するとこちらも、笑顔だった表情が、醜い顔へ一気に豹変した。
 ■■■■■はその状況へ目まいがした。
■■■■■(どうなってしまったんだ……、B……、C……)
 BとCは大笑いをしながら、■■■■■を蹴り続け、そのうちに■■■■■の意識は哀しみに沈んでいった。■■■■■が動かなくなった時、BとCは慌てて立ち去った。
 うずくまる■■■■■を、行き交う人々は、軽蔑の目で眺めていた。

 駐車場の付近にあるベンチに座った、赤いシルクハットをかぶった男が、窓ガラス越しに、一部始終を観察していた。



−2−
<場所:疑心暗鬼学園の食堂>
 ■■■■■と、その友人のZが話している。

友人Z「それは、相手が悪いだろう」
■■■■■「え……ああ」
(以下、話し手、交互)
「何か、思い当たるものでもあるのか」
「……B、それにCもだが…… あんなに変わってしまって……。悪意よりも、何か病にかかっているようでもあった……精神関係とかの」
「それもあるかもしれないが、ただ、奴らがした事は、やりすぎだ。被害届でも出せばいいんじゃないか?」
「うん……、でも僕の方にも原因があるかも、とも思ってる」
「何かやったのか」
「はっきりとした事じゃないけれど、Bは僕が邪魔のようだった」
「そりゃ、そういう素振りをするBの方が原因だ」
「自分がしてきた事、よく覚えていない。何か失言でもしたんだろうか。何か悪い事をしていたんだろうか」
「とにかく、Bにそれを尋ねてからだ。話はそれからだ。想像で色々くっちゃべっても仕様が無い。――まあ、Bが話せる状態ならば、だが」
「目が合っただけで、ナイフを突き出されそうな様子だった」
「だったら、しばらく放っとけ」

 学園の駐車場に緑色の車が止まっている。中には赤いシルクハットの男。
 Zに仕掛けた盗聴器から聞こえる話し声を、静かに聞いていた。
レッドパス「…………」

    *

 夕焼けの放課後。B,Cは一緒に帰っていた。
B「……なんかイライラしてね」
C「ええ……。それにしても身の毛のよだつような振る舞いでした、Bさん」
B「ああ、中学の頃、好きで演劇部入ったんだけど、こんな形で役にたつとはね」
C「それに■■■■■の顔見ました? 失望感たっぷりの。あれも演技ですかね?」
B「ああ、あいつはオーバーリアクションな俳優だからな、そういう奴なんだろ」
C「フフフフ……」

 曲がり角からレッドパスが出てきた。
 BとCは笑ったまま、レッドパスとすれ違う、一瞬。
 突如、Bの後頭部に打撃され、Bが倒れる。Cが振り向くと、刀を持つ、赤いシルクハット男。
C「何オ…………!?」
 レッドパスはCの喉元を強くつかんだ。人差し指と薬指、親指のみで強く押しつぶしている。
 ただ潰そうとしているわけではなく、どういう訳か、力を加減しているらしい。
 ただそれでも、片手で窒息させてしまうほどに、つかむ力はすさまじい。
 やがて、急に首を折るかのように曲げられ、気絶した。

レッドパス「愚か者。しばらく、その身をもって償え」

 レッドパスは同様のことを、Bに対しても行った後、どこかへ去っていった。

    *

 BとCの意識は戻った。生きていた。喉が痛い、違和感がある。
 違和感……
B「――……―……――!?」
C「…………-―−−−???」
 喉が、声が、声帯が、機能しなくなった……
 後々、日がたつごと声は回復していく事が分かったが、怒りは募《つの》った。
 BとCは、赤いシルクハット男を恨み、探し回った。が、似たような帽子を付けた者はいても、本人を見つけ出す事はできない。
 BとCは気まぐれに、こう思った、赤いシルクハット男は誰かの変装なのでは? と。そして、いつのまにか、赤いシルクハット男は■■■■■の変装だと、決めた。



−3−
 学校での夕方、清掃時間、■■■■■はその部屋に一人だった。
 突然現れたBが、■■■■■の動きを羽交《はが》い絞《じ》めで止めた。
■■■■■「なに、を……」
 ゴム手袋にカッターナイフを持ち、紙ナプキンをしているCが、■■■■■の喉を突っ斬った。
 BとCは、ニヤニヤせせら笑う。Cは返り血にぬれた紙ナプキンを外した。
 すぐに立ち去った。

 その後、教師に見つかり、病院へ■■■■■は運ばれる。生きていた。BとCのように声を失いつつ……。もう声は戻らないらしい。

 筆談により、■■■■■はBとCにやられた事、その時の状況を記憶にある限り、詳しく語っていった。
 警察も、その二人を重点に調べていった。
 だが、警察は、二人を犯人ではない、と結論付けた。
 理由は、犯人だといえる状況、物的証拠が、ほとんど見つからなかったのが大きかった。

 なぜそんなものが見つけられないのか…… 単なる運の良し悪しだったのかもしれない。
 凶器のカッターナイフは、学校からも自宅からも見つからない。そして、BとCの帰り道付近も調べつくした、らしい。返り血の付いた紙エプロンに関しても同様、話だけで実物が発見されない。
 また、犯行時刻に、BとCを見かけた証人となる者は、皆無という事だった。

 帰宅時間は、犯行時刻より後になっているが……、ただそれだけでは全然、証拠とは言えるはずも無い。
 BとCからは犯行についての自白も取れず、情報も聞き出せなかった。
 そんな事をする動機さえ、見つからない、とされた。

 「3人は仲良しでした」、という証言が聞こえた。
 BとCの親御さんは共に、
「私どもの娘が、そのような凶行を犯せるものだとは、普段の素行を考えても、とてもとても思えません」
というような証言をした。

 そして真犯人は別にいる、と、判断された。

 終始、■■■■■には非常に不可解だった。訳が分からなくなった。もしかして不可解なのはこの世界であり、自分にはこの世界が全く理解できていなかったのか、とでも思ってしまうほど心細い心境だった。




−4−
 裁判はいつのまにか、別なものになっていた。
 BとCへの暴行事件についての重要参考人として、■■■■■が呼ばれた、というふうに、話が進んでいた。
 良く分からない話が6時間に渡って繰り返され、とにかく以下のような結論になった。
 「証拠も不十分、はっきり■■■■■氏の犯行だとするには困難な為、執行猶予3年、金庫の禁固で――
 ――とにかく、3年、静かに暮らせば、実刑は無いということです、■■■■■さん」
 犯人ではないが、刑を受けてもらう。と、なぜか、そうなった。
 ■■■■■は、ただただ失望した。いろんなものへ、失望した……

■■■■■(もう この世界に 価値は 見出せない)

 明朝、■■■■■の自室にて――
<真っ暗な背景に、首吊りのシルエット>

 ■■■■■はその日から行方不明になった。

    *

 BとCがにやけて喋っている。
B「楽しい」
C「この世界、よくなったね」

 その二人と、レッドパスが交差した。
C「B、今通り過ぎた人」
B「あっ、あいつだ」
C「……見間違えた。あの時の奴は■■■■■でした、ね?」
B「ああ……あ、分かった。そうだったな」

レッドパス「…………」<険しい顔>
レッドパス「愚か者、排除……」

    *

 後日、BとCはそれぞれの家の中で、首を切断されて、死んでいた。
 切り口はあまりにも平面で、大きな刃物による一撃で斬られた、と思わせるものだった。
 にもかかわらず、切り口周辺には、首吊りでもしたかのような、縄の跡がはっきりと残っていた……。

    NEXT


<自室の扉が開く>

■『猛毒ハバネロ』

<サイケデリック・シティ、地下最奥でのイベント>

<場所:地下入口>
 危険と書かれた立て札。黄色と黒のロープ。ガスマスクを装着しないと、レッドパスでも先へ進めない。

<場所:地下最奥>
 薄暗い部屋に、紫煙《しえん》を吐く顔色の悪い女性がいる。壁を背もたれ代わりにして、ぐったりとベッドの上に座っている。
ハバネロ「…………」
 チカチカ何かが輝く。向けば、コンピューターが一台、女性のそばに置いてあった。そのチカチカした光が、この薄暗い部屋全体を点滅的に照らしていた。
 物憂《ものう》い表情をして、吐いた紫煙を見つめる女性。
ハバネロ「ふうぅぅ…………」

<女性の吐く紫煙に、画面は移動して、回想に移る>



<セピア開始>
//ここから多分、モノローグ:(ハバネロによる一人称)


-1-
 わたしは猛毒体質だった……
 身体からは常に毒ガスがにじみ出て、周りにいる人へ、危害を加えてしまう。
 父と母は、わたしのせいで中毒死した。家族……を含め、誰かと一緒にいる事が、――それだけでわたしは悪い事をしているんだと、痛感した。

 避けられて、差別されて、迫害されて、殺されかけた。
 殺されかけた時、みんな……、みんな、仕方無いと言って、それを容認したのが……ショックだった。
 わたしはその街を出た。
 持ち出したリュックに、お金は入ってなかった。あるのは煙草の山だ。
 酒と煙草はわたしの猛毒体質を和らげてくれる。

 ただ街から遠くへ行きたかったわたしは、無我夢中で、昼夜構わず歩き続けた。
 そして、真っ黒な岩だと思って通った穴に落ちた。その先は洞窟だった。
 わたしはもう疲れた。今日何度目かの煙草を口にくわえて、寝た。
ハバネロ(永遠の眠りは、まだか……?)
 もう、ぼろぼろだった。このまま歩き続けたって、最後には餓死するだけだと思った。ここを死に場所にするほうが、今の一番良い選択だと、思いながら……寝た。
 わたしはここまできてから、あの時みんなに殺されても良かったな、と少し思った。



-2-
 数日たった。煙草は尽きた。
 幻が見え始めたらしい――。目の前にでっかい顔が見える。
ハバネロ(誰か?)
 知らない子供だ。何か喋っている――

 明朝の朝日と共に目が覚めた。
ハバネロ(日が差し込んでいる?)
 洞窟の出口がすぐそばだと気づいた。
 そして隣には少年の幻。名前をメフィストと名乗った。

 メフィストは毎日のように来てくれる。気が合い、ずっと一緒に喋っていた。
 メフィストが持ってくれる食料のおかげで、生き長らえていた。

 徐々に毒の影響がメフィストにも現れてしまった。少しずつ、やつれて、顔色も悪くなっている。
 わたしはある時、メフィストが帰ってから、洞窟の出入り口を、内側から岩で塞《ふさ》いだ。

    *

 次の日、メフィストは洞窟の前まで来るが、追い返す。そういう日々が何日か続いて、メフィストはこなくなった。

ハバネロ「もう、良い人が死んでいくのは、ごめんだ……」

ハバネロ(でも、いずれまた繰り返しそうだ…… また誰かと親しくなり、誤れば殺してしまう――)

ハバネロ(いっそのこと、わたしが、わたしを、殺そうか……?!)

 ハバネロは自分の左手を、自分の首にあてがう。徐々に力を込めて絞めてゆく…………

 とても、疲れていた。
 意識が薄れていくにつれ、力は抜け、いつのまにか寝ていた。
 寝息とともに、目元から一滴の水が滴《したた》った。



−3−
 飢餓《きが》状態だった。放っておいてくれれば、餓死《がし》するのは時間の問題。そういう状態で、うつらうつら一日中、眠気の中にあった。

 その時、洞窟の出入り口が開かれた。現れたのは、見たこともない顔をした生物。
メフィスト「ハバネロ……!」
 ガスマスクをしたメフィストだった。首から下はダブダブの防護服で覆われている。

 すぐに駆け寄って、わたしに水を飲ます。衰弱した喉が痛む。飲み干した後、数回せきをして、「ありがとう」と答えた。

 メフィストはガスマスクを外して、「今度は大丈夫」と笑む。




<セピア終了>
<過去の記憶(回想)から現実へ戻る>
<場所:地下最奥>

 先ほどと変わらず、チカチカした光が薄暗い部屋を静かに照らしていた。
 ハバネロはくわえていた煙草を、灰皿に押しつぶした。
 カサを杖代わりにして、ベッドから降りて立ち上がる。
 おぼつかない足取りで歩き出す。
ハバネロ「メフィスト……を、助けなくては…………」

    NEXT


<玄関が開く>

第3章:死遭わせ

■『さいはて強制収容所』

<場所:さいはて強制収容所、牢屋>

 明かり取りの下で、壁を背にノロは座っていた。
 壁の外に、今にも倒れそうなほど弱ったハバネロがいる。

ノロ「……分かった。引き受けよう」
ハバネロ「ありがと……う……、……ごほっ、ゲホッ……ゲホッ……」

 カサを突きながら、よろめきつつ立ち去るハバネロ。



<場所:食堂>
 80歳の老人がノロを見かけて喋る
老人「あんた……! オレだよ、雲だ。雲平八だ。
 ノロ、全然変わらないな、その姿。久しぶりじゃなか。覚えてるか、オレを?

ノロ「……。残念だが、人違いだ」
老人「ええ? ああ、そういやア、その姿、あまりにも変わらなすぎだったがナ、歳が若すぎっちゃってたか。そうだもんな、生きてちゃヨボヨボになってるもんだら。
 それにしても、よく似てるの。もしかしてあんたの親父、それとも、じっちゃまは、ノロ・ファウスト、ちゅうんじゃないかね」
ノロ「……。他人の空似だ」
看守「ごちゃごちゃ抜かすな、ノロ! 黙っとれ!!」
 近くを通り過ぎた看守が叫んで行った。
ノロ「――」
 老人は何もしていなかったように、淡々と飯を食べていた。
看守「……それとノロ、お前はまだやっていなかったな、『訓練』を。……明日は覚悟しておけよ」
ノロ「――」
 表情のわずかな変化も無く、ノロは看守をじっと見据えていた。




<場所:運動場>

「これから訓練を始める」
 湿った空気の漂う、陰湿な運動場。
 そこへ囚人服姿の人々が整然と並び、行進していた。

 スーツ姿の看守達が、囚人達の合間を徘徊《はいかい》し、監視の目を向けている。
 歩き続けて4時間は経過した。その間、一時《いっとき》の休憩も許されなかった。
 一人を除き、全員に疲れの色が露《あらわ》となっていた。疲労で足がもつれ、倒れそうになる者も出始めた。看守の罵声が、あちこちから発生する。


看守A「おィ! 立て! 少し、頑張れやぁ!」
囚人B「ハイ! スイマセン……!」

看守C「身体ぶらすなよ……てめェら。 ……おい。返事しろ。返事。……ぼそぼそ言ったんじゃ聞こえねえぞ! 腹から声出せ! 声ッ!!」
囚人D「ハイ!」

看守E「アアそうだ お前ら声出せ! 声、加減している奴には、そいつにだけ個人レッスンで鍛えてやるからよ!」
囚人F「ハイ!」

看守G「まだ大丈夫か、まだ歩けるな?」
囚人H「いえ…… もう足に限界が――」
看守G「……バカヤロウ、返事は "はい" だけだ。私語言ったら、走らせるからな。……返事」
囚人H「……ハイ」
 看守Gは拳銃を、服の裏から相手に押し当て、脅す。
看守G「返事」
囚人H「ハイ!」

 異様な風景に、さめた目付きをして、平然と歩くノロがいた。
 看守Aがノロの前を通った。顔をのぞき込むようにノロを睨みつける。

看守E「もう少しだからな、頑張れよ」
囚人達「ハイ!」
ノロ「――」
看守A「……。お前…… やる気 あんのか……?」
ノロ「――何?」
 従順な態度が全く見られない。

看守A「っ……!? あほか! ”何?”、じゃねエ! 俺は”やる気あんのか”と聞いてんだ! あと口の利き方に気を付けろッ! あぁ゛ン?」
 けたたましく、わめく。

ノロ「――」
 ノロはさらに険しい顔つきで、看守Aを見据えている。
 看守Aは人差し指を、ノロの眉間《みけん》に突き立てて、威圧して言う。
看守A「な ん だ、そ の 目 は ?」

ノロ「――。邪魔だ……」

看守B「ああん? 口の、利き方に……」
 看守Bは、突き立てた人差し指に力を入れた。
 おもむろにノロの左手は、看守Aの人指し指をつかみ……、折った。

看守A「ああん?」
 不機嫌に反応した看守A。その直後、「痛え痛エ」と、わめいて、のた打ち回った。目を湿らせて、顔面をしわくちゃにして、しばらくわめいた。看守Aの腰元から何かが抜き取られた。

 ノロはその様子を淡々と見ていた。まわりは凍りつくように、一時的に沈黙した。

 気が済んだ看守Aは立ち上がり、看守Eに支えられながら、病室へ歩いてゆく。
 去り際、ノロに向けてツバを吐いた。瞬間、ノロはツバを払いのけると同時に看守Aの顔をはたいた。
 看守Eはノロに食って掛かろうとしたが止め、看守Aの方を振り向き見て、それから病室へ向かう事を優先し、立ち去って行った。

    *

 未だ周りの目はノロを見つめている。ノロは立ち去ろうと歩き出す。
看守C「お前、どこへ行くつもりだ」
 構わず、ノロは進んでゆく。
 すぐに血が上る看守C。拳銃を取り出した。
看守C「おめえ……、撃たれなきゃあ、言う事分からんか??」
 その瞬間、看守Cの眉間が撃ち抜かれた。呆気《あっけ》に取られた表情で、倒れてゆく。

ノロ「――」
 ノロの右手に拳銃が構えられていた。
看守H「あんなもの、どこで……」
看守G「いいから、構えろ!! 撃ち殺せ!!!」

 さらに看守3人の頭部が撃ち抜かれた。囚人達は流れ弾に被弾しないよう伏せている。
 ノロを見失った。

 残った看守達が、あたりを見回す。
 その時、看守の一人が、残った看守達を撃ち殺した。
 そしてその看守も、既に死んでおり、前へと倒れた。――その背後にノロがいた。

 ノロはその施設にあった車両を強奪し、さいはて強制収容所を脱走した。

    NEXT

<自室のパソコンにメールが届く>
「『残酷ホラーハウス』開店
 本物の恐さと、本物の財宝(200万相当)を用意して、挑戦者を、お待ちしております
 場所:〜〜〜〜   日時:〜〜〜〜   残酷委員会より」

■『残酷ホラーハウス』

<残酷ホラーハウスを訪れた時のイベント>
<視点:メフィスト>

//ゲーム版では大幅に変更もしくは追加する可能性有り


−1−

 面白そうな建物があり、メフィストはそこへ入っていった。
 大型バスが通れるほど大きい玄関扉が、閉まる。その衝撃音が、建物全体に響く。

当主「ここにお集まりの皆さん。ようこそお出で下さいました。私はここの当主を名乗っている者で、今回のゲームの案内人を承りました」

 メフィスト以外にも既に人が集まっているらしい。見ると、10人程度。お客さんの数としては少ないとも思う。

当主「賞金200万を得るのは誰か! この建物のどこかにある200万の価値がある財宝。それを見つけるのが、今回のゲームです」

 当主は台車を引っ張ってくる。そこには金属バットや鉄棒がたくさん乗せてあった。


当主「この建物には危険なカラクリが色々仕掛けられている様子でしたので――。ここに簡単な武器を用意しました。あとでお好きな物をどうぞ。
 それではゲームスタートです

 当主は背後の扉へ去った。




−2−
 あちらこちら歩き回るが、何も無い。
 しばらく歩いて、そういえば他の人たちと全く出会わない事に気づく。
 じっと耳を澄ます。無気味なほど静かだった。
 漠然とした身の危険を感じ、先ほどの玄関前ロビーへ戻る事にした。

ちゃぽん……
 靴が赤く濡れた。床に赤い水溜りがある。血のような気もするし、それにしては水っぽい気もする。
 とにかくロビーまで来た。
 メフィスト「……!?」
 様変わりしていた。全てが全て赤い、血だらけの内装になっていた。
 人が4人いる。だが全員ちぎれていた。

 上方から気配……
メフィスト「……!」
 見上げた。紙ヒコーキが飛んでいた。
 落ちてきた紙ヒコーキを手に取り、開く。何か文字が書かれていた。
手紙「出て行け
 赤いインクで、そう書かれていた。

メフィスト「!!」
 突然、何か落ちた。血が飛び散る。赤い肉が落ちた。人の形をしていた。
 もう1つ増えた死体を背に、メフィストはその場から走り去った。



−3−
茶服「ちょっと、そこの人」
 誰かとすれ違った。茶色い服を着た30代くらいの男性がいた。
茶服「いやぁ助かった。もう生きているのは私だけなのかと心細い思いでした」
メフィスト「……?」
茶服「あ……、誰?、というような顔つきですね。私は、参加者の一人です。怪しい者ではありません。
 ――”怪しい者では有りません”なんて私が言うと、それこそ私が怪しく思われてしまい、ややこしい言葉です。
 ところで……、もうロビーの惨状は見たと思いますが……

 メフィスト、うなづくように顔を伏せる。
茶服「――ええ。とても危険な事になっています。
 貴方は一人ですか? 他に生存者がいるか分かりますか?

メフィスト「わからない」
茶服「そうですか……。玄関のほうもさっき試してみましたが、到底、人の力で開くようなものではありませんでした……」
メフィスト「……」
茶服「私たち参加者は、全部で10人でした。私と貴方で二人、先ほどのロビーの……亡くなった方達が4人。計6人。残り4人の安否が気になります……」
メフィスト「……ンン」
茶服「え、どうしました? ナニ? 先程、ロビーで死体がもう一体落っこちて来た、と、……上から?」
 茶服、ロビーの方へ走っていく。
茶服「それは妙ですよ、メフィストさん。だって、どこから落としたのか……? 調べてみましょう。
 ……え? 走らない方がいい? あ、そうですね。どんなトラップが仕掛けられているか分かりませんからね。



−4−
茶服「いやァ〜、何もありませんね〜。それとも私の目が悪いのか」
 茶服は眼鏡を外して、そこらへんにあったカーテンの布で、レンズを拭いている。

 ロビーまで戻ってきたメフィスト達は、その上の方を調べていた。上の方というのはベランダのような部分があって、2階の部屋からそこへつながっていた。
 だが、そこには別に異常は無く、血で汚れてもいなかった。

 メフィストは下の方にいる。ふと見覚えのある物を見つけて近づく。
 鉄棒が置いてある台車があった。一応、武器として鉄棒1つ持って行くことにした。左手に取った。
メフィスト「重い……」

茶服「しまった! (レンズが)もっと汚れた。……もうちょっと清潔な布がぶら下がったカーテンを、どこかかなたに御座いませんか」
 何か独り言を言っている茶服を、メフィストは下の方から見上げていた。しばらく茶服の方を見上げていたが、首が疲れてしまい、下を向いてとぼとぼ、あたりを観察するように歩いている。


茶服「……ぐげぁ…………」
 気味の悪い声がして、茶服の方を見る。茶服の方もこちらを見ていた。ただ何か喋っただけらしい。特に変わりは無い。――だがしばらく見ても、茶服は身動きせずに、ただこちらをぼんやり眺めている。
メフィスト(疲れただけ……?)
メフィスト(――!?)
 茶服の頭部が取れた。
 メフィストのいる床へ、落ちた。
 潰れた。

メフィスト「……ぁ…………!」
 ひざが床に付く。うずくまり、恐怖心と疲労感の中、呆然《ぼうぜん》と茶服の頭部を見ていた。



−5−
 ショックで視界が揺らめいた。目の前をぼんやり見ていた。
 見ている先が廊下である事を、今になって気づく。視界は正常に戻り、徐々に精細になる。
 廊下は300mは続く長いものである事が分かった。
 そのずっと先の角に、背の低い、白髪の少年が歩いているのを見た。
メフィスト(人だ……! まだ生きてる!)
メフィスト「ぉーぉい!」
ノロ「――」
 大きな声で呼びかけた。だが声帯が未熟で、それなりの音量しか出せなかった。のみならず、全身が震えていた。背中に寒気を感じながら立ち上がる。
 ノロは気づかない素振りで、別の角に姿を消した。
 思わずメフィストは走り出す。が、すぐ止まる。罠が仕掛けられているかもしれないという用心をしながら、ゆっくり歩き出す。

 廊下の曲がり角まで来た時には、既にノロの姿は見当たらず、足音も聞こえない。
メフィスト(さて、どこへ、行った?)
 ノロの消えた先の廊下をきょろきょろ見渡す。ドアがいくつかある。ずっと奥は左に曲がっているようだ。
 とにかく、それぞれのドア開けて、部屋の中を確認していく。1つ目のドアの取っ手をつかもうとする。
メフィスト(……)
メフィスト(スタンガンとか、あちら側の取っ手に接続されていたりして?)
 ずっと忘れていたが、左手に鉄棒をしっかり握っていた。そのことを今思い出す。
メフィスト(鉄じゃ同じ事かもしれないが、直に触るよりは……)
 そでを引っ張って、手先まで服で覆い、その上から鉄棒を握った。
 鉄棒の先を、ドアの取っ手に、軽く叩くように触れた。
 ――ただ、叩いた音がしただけだった。
 ドアの脇に立ち、メフィストはすばやく取っ手をつかんで開けた。――何も起こらない。
 部屋の中を覗く。ベッドに、机に、本棚等があるだけの小部屋だ。
 恐る恐る部屋へ入る。入った直後、死角だった左右をすばやく確認する。何も無い。
 用心に超した事は無かったが、この部屋に仕掛けは、無かったらしい。

 元々の目的は財宝探しである事を思い出し、注意しながら、漁った。
 けれども、よーく考えてみれば、死人がたくさん出てしまった血塗れ状態の建物内。事態は異常。財宝とかいう話も信用できない、と判断した方がいいのではと気づいた。
メフィスト(いや……それでも、これがホラー物だとしたら…… 死体も精密な模型を使っているのかもしれない……)
 メフィストは先程の、血塗れなロビーへ向かう。そして死体の一つをじっと観察する。
メフィスト(偽物……なの……?)
 結局、偽物かどうかは分からず、とにかく気持ち悪いという事だけ分かった。ちぎれた胴体の断面を見たけれど、どうも本物らしく見える……
 とぼとぼと、残念そうに、メフィストは先程の小部屋へ戻っていって、ベッドに横になった。
 脳内に、恐怖心やらが、ぐるぐるとメフィストを追い立てる。
メフィスト(……。死が、近づいてくる…… ここにいる限り…… ……逃げなくては!)
 ベッドから飛び起きた。




−6−
「キィィイァァアアァァ」
……!!
 女性の金切り声が轟いた。
 近い。声の方へ進む。
 廊下を数回曲がった先で、ドアから女性が後ずさりで出てきたのを見た。
 こちらに気づき、手を伸ばした。「助けて」と言うように口をパクパクさせた。遠いためか、声は聞こえなかった。
 走って駆け寄る。部屋の中が見えて、ゾッとする。
メフィスト(え……)
 毒々しい死体、もしくは赤い肉片の塊が、床を這って、ゆっくり近づいてくる。
 慌ててメフィストはドアを蹴り飛ばして閉めた。肉片にも少し当たった手ごたえがした。

 女性は腰が抜けてしまい、床に座ったまま立ち上がれない。
 メフィストはドア越しに、肉片のモンスターへ警戒している。だが、既に気配は無い。
 しゃがみ込み、女性に向かって言った。
メフィスト「私はここから離れる。君はどうする?」
女性「腰が抜けて、立てなくて……」
メフィスト「ここから少し離れた場所に、安全そうな小部屋があった。そこへ行くなら、肩を貸す」
女性「……お願いします」

 二人は先程の小部屋へ移動した。ベッドに女性を座らせ、部屋を出て行こうとする。しかし、話を聞けば何か情報が得られるかもしれないと思い、戻ってくると、女性が口を開いた。
女性「あの、他の人はどうなったんですか?」
メフィスト「ロビーに6人いる。死んだ状態で」
女性「え、また、誰か殺されたんですか」
メフィスト「……」
女性「他に、先程の怪物に、2人やられました…… あの…怪物は恐ろしいです…… 触れただけで、溶けてしまうんです。それを忘れないで。貴方は、死なないでください。」
メフィスト「……心配されるほど、親しい仲では無いと思う」
女性「……だって貴方の他に、生きている人間が、もう一人もいませんもの。
 そういうことでしょう?
 全員で10人しかいないうち、8人も亡くなってしまって……。残りは私たち2人だけ…… もう絶望的じゃない……

メフィスト「他に、当主さんがいる」
女性「その人はさっきの怪物の仲間なんじゃないんですか? わざわざ武器を与えるようにしたのも、最初から何か知っていてのことだろうし。はぁ………… ここで殺されるんですか、私たち……


 ここで、ちょっと妙だと気づいたメフィスト。
メフィスト(残りは私たちだけ――と、すると、さっき見た白髪の少年は、誰? 幽霊? そういやァ、その人見た時、私の身体は震えていた)

メフィスト「……。参加者は10人だったと、はっきり覚えている?」
女性「はい? ええ…… 貴方も見たでしょう? 覚えてないんですか??」
メフィスト「私はさっき、もう一人の生存者を見かけた。白髪の、背の低い人だった」
女性「はァ? きっと敵の仲間じゃないかしら。参加者に白髪の人はいませんでしたよ」
 女性はただ興味が無いというだけで、良く考えずに喋っているようだった。
メフィスト「そう……」
女性「そう」

メフィスト(幽霊の幻覚でも見たのかな…… あんな惨状見たせいかな、幻も見てしまうのは)

 その後女性は、突然涙を流したり、ブツブツ独り言を繰り返していた。
女性「なんで私が、こんな目に…… 財宝なんて嘘だったのかよぅ…… 私の一生は何だったんだよう」
 泣きじゃくりながら、ベッドを壊している。
メフィスト(相手にするだけの価値が無くなったみたい。成れの果てって感じだな。得られる情報も、もう無いだろうね)
 メフィストは部屋を出た。

 300mほど離れた時、尋常ではない女性の悲鳴。
「ぎぃぃぁやああああああああぁぁぁぁやぁぁぁぁっぁあ」
 戻ってくると、さっきの毒々しい肉片が、滴り落ちて女性を溶かしていた。
 部屋に一歩入ると、肉片からの蒸気で、メフィストの手の皮膚が壊れ始める。部屋から立ち退いた。
 女性は自力で肉片を跳ね飛ばす。壁に叩きつけられた肉片は飛び散り、女性の方はそのまま崩れ落ち、微動だにしなくなった。
 飛び散った肉片が、メフィストの腕や手をかする。手が若干溶けて、しみるように痛む。服に肉片がかすった場合は、汚れるだけだった。
 肉片は未だ動いている。





−7−
 視界に人影が映る。廊下の向こう側から、前に見かけた白髪の少年(ノロ)が近づいてくる。
メフィスト「助け――」
 ふと、よぎる先程の考え。この少年は、幽霊とか幻? はたまた、敵なのか味方なのか……?
 肉片の1つが、今度はメフィストに向かってきていた。
 別の方向からは、ノロが突撃銃を右手にぶら下げて、迫ってくる。
メフィスト(絶体絶命……)

 迫り寄る肉片から後ずさりしながら、壁を背にする位置まで追い詰められた。
 肉片が部屋の敷居をまたいで、廊下へ出る、その時……。
――数発の銃声。
 肉片が力無く倒れる。
 こちらに構えたノロの突撃銃から、わずかに硝煙が立ち上る。

 すかさず、部屋の前まで移動したノロは、室内にいる残りの肉片、――ではなくその天井に向かって数発を撃ち込んだ。
 肉片達は倒れて静止した。

メフィスト「いったい……どうなって……」
 ノロが肉片周辺の床をつまんで、持ち上げた。しかし持ち上がったのは、床ではなく肉片だった。
ノロ「……血糊を混ぜた廃棄用食用肉で、水酸化ナトリウムか何かを包み込み、透明な糸で操っていた手品だ……」
 淡々と話した後、持ち上げた肉片を振り回して、天井の割れ目に飛ばした。
 天井裏で誰かがもがく物音がしばらく聞こえた。

 いつの間にか、ノロの後ろに巨人がいる……! 巨人がノロに倒れ掛かる。
メフィスト「後ろ! 危ない!」
 その声を聞いても、ノロはじっとして、巨人に押し潰されるように倒れていく。
 砂埃で数秒間、巨人とその周辺が見えなくなった。その後、視界が良くなる。
 ノロは巨人の横に仰向けになって、倒れてきた巨人の背中をナイフで突き刺していた。
 ナイフを外し、ノロは立ち上がる。
ノロ「玄関は開けておいた……。今すぐ、ここから逃げろ」
 そう言うと、玄関とは逆の方へ、ノロは去っていく。

 巨人の背中が、一部はがれた。事切れた人間がいた。巨人の人形を裏から操っていたらしい。



−8−
 ノロの向かった先から、銃声が何度も聞こえる。
 流れ弾に当たりたく無い思いで、慌ててメフィストは玄関へ駆ける。
 廊下を駆けて行く時、天井に、壁に、床に、と、いたるところに銃弾の跡があるのを目にした。一部の壁は破壊され、中には黒いウェットスーツに身を包む人間の死体と機材が入っていた。
メフィスト(ホラー仕掛けの、正体か……)

 ロビーに出た。死体が増えている。先程と同様の黒いウェットスーツ男が、銃弾の一撃を眉間に貫通させて亡くなっている。そういうのが複数体あった。そしてロビーのいたるところの壁が破壊され、隠し部屋が露になっていた。
 玄関はノロの言うとおり開いていた。
メフィスト(扉は?)
 開いているというよりも、扉が無くなっていた。少し離れた場所にある、ひしゃげた大扉を目にした。爆撃でも受けたかのような有様だった。
メフィスト(いったいどんな武器まで持ち込んでいるんだ……?)

 メフィストは残酷ホラーハウスをすっ飛ぶように脱出した。



−9−
 残酷ホラーハウス、最上階にて。
……キイィ……コ…………キイィィ……コ…………キイィ……コ…………
 ロッキングチェアに座った状態で、眉間を撃ち抜かれた当主の姿がそこにあった。
 にぶく揺れるロッキングチェアの軋みが、哀しく響く。

第4章:獄牢

■『チンピラ酒場』

 そこは酒場だった。喧騒が激しく、漂う空気は煙草臭い。

 汚れた手配書が落ちている。
 手配書の顔写真
”レッドパス テロ組織リーダ 50000ドル”

 学生服の少年がカウンター越しにメニュー表を見る
”テキーラ、バーボン、シェリー、ココナッツミルクカクテル、ミルク、芋焼酎、...”
学生服「……」
マスター「お決まりですか?」
学生服「……ミルクを」

チンピラA「ミルクだってよ」
チンピラB「カカカ……」
ゲへラゲラゲラ……
 チンピラ達は不快感を与える大笑いをした。

 学生服は機嫌を悪くしていく。マスターは学生服を冷たい表情で見下ろしていた。
学生服「?
 何か?

マスター「お客さん。ここは子供の来る店じゃねエ。こういう目にあいたくなきゃア、大人になってから来な」
学生服「…………(貴方自身が、精神年齢を大人にしてから来てもらいたかった)」

 背後から声。
レッドパス「マスター、オレにはホットミルクをくれ」
マスター「ん…………ああ」
 口をもごもごさせて、マスターは答えた。

チンピラA「あいつもガキだってか!」
チンピラB「違えねェ」
ゲラゲラゲラ……
レッドパス「……」

レッドパス「気持ち悪い声だ」
チンピラB「なンだと! お前!!」

 すぐさまチンピラたちは頭に血を上らせて、イスから飛び起き、レッドパスの周りを囲んだ。一人だけは少し離れていた。
チンピラF(ああ、やっぱあいつレッドパスだよなア……)

チンピラA「ガキと言って怒りん坊になったのなら謝るぜ。すまんな、お子様」
チンピラB「ああ、お子サマは、帰って、ずっと勉強してろ!!」

 拳の骨を鳴らしている。そして一発、レッドパスの顔を殴った。イスに座っていたレッドパスは、殴られた勢いで背後の床に立ち、テーブルの上にあった割り箸を一つ手に取った。

チンピラB「そんなん取ってどうすんの? 割り箸でも食うのか?」
 汚く笑いながら喋った。

……!?
 近くにいたチンピラBは倒れた。眼球が潰れていた……

 チンピラA以外、すぐに逃げた。

チンピラA「おい…… ただで済まんことは、覚悟しているだろうな……」

 そう言いながら、刃渡り20cm程のサバイバルナイフを取り出した。

レッドパス「そのセリフは、鏡に向かって言うんだな」

チンピラA「ああん? 言い逃れしようたってそうはいかねエぞ」

レッドパス「……」

 チンピラA、飛び掛る。
 レッドパスは、いったん後ろに下がろうとしたが、その前に左足つま先を踏まれ、バランスを崩した。

 その時、チンピラAのサバイバルナイフがレッドパス目掛けて動く。
 レッドパスの服はちぎれ、喉を裂いて、アゴに刺さった状態でナイフは止まった。
 滴り落ちる血液は、その割に少なかった。

チンピラA「詫びろッ…… 今すぐにだ。だったら許してやらねえ事もねエぞ」
 ニタニタと笑いながら、ナイフをさらに奥へと刺し込もうとしている。

 手にしていた割り箸で、レッドパスは相手のミゾオチを突き押した。
 「ぐえっ」という声とともに、一歩後退する。
 その隙、逃さずレッドパスはナイフを、それを持った相手の手ごとつかんで、アゴから抜いた。
 と同時に、相手の腕の関節を横から殴り、相手の腕を曲げた。
 そしてナイフの切っ先を相手の目玉へ向けた。
 目玉の数センチ手前で、ナイフは静止した。

レッドパス「自分の身体が切り裂かれる覚悟があっての行動か?」

 チンピラAは腰が抜けた。涙ぐんでいる。
 レッドパスはナイフを叩きつけるように地面に捨てたのち、去っていく。
 チンピラAの表情はとたんに憎悪に染まり、武器を得ようと、視線はナイフへ移動する。
チンピラA「……」
 絶句したのち、チンピラAは立ち上がり、コンクリートに深く刺さったサバイバルナイフを背に、立ち去る。

■『チンピラ報復』

<後日、裏道でのイベント>

 そこにはチンピラたちが20人ほど集まっていた。
「……ん、あいつだ! おめえ達、あいつを切り刻んでこいッ」
 全員がサバイバルナイフを取り出して、こちらにぞろぞろ向かってきた。

 レッドパスは慌てて逃げてゆく。トランシーバーを取り出して話す。
「今向かう。用意しろ」

 チンピラたちは嘲笑。
「尻尾巻いて逃げてくぜ」
「お笑いだ、見ろよあの無様」
「ケラゲラ」
「ププブパパベベベ」

レッドパス(……この連中は、相変わらず不快な者ばかりらしいな)

 角を曲がると、レッドパスとレッドパス率いるゲドク社の団体がずらりと並び、全員がトミーガンを構えていた。

 チンピラ集団が、血の気が引く、身体が固まってしまった。
「ちょ……っと待った、降参だ!」

<効果音:機関銃>
 ズ タダタダタダ...

レッドパス「愚か者――排除」

――弾丸の雨は降り終わった。愚か者達は息絶え、裏道は血で覆われた――

■『神様空想』

<はげた金ぴか服を着た中年男性 の近くを通った時に発生するイベント>
(金ぴかおじさん、以下、GOLDと表記)

 GOLDが一人で喋っている
GOLD「ああ、神よ。私たちを見捨てるのですか。私たちはずっと、貴方に仕えてきたではありませんか。どうか、今こそ…… 今こそ救いを。今が窮地なのです。今こそ、貴方を必要としているのです」

 レッドパスを見つけて迫る。
GOLD「どうか貴方も、私たちへ募金をお願いします」
 GOLDは古ぼけた帽子を逆さにして持った。
レッドパス「……私"たち"とはどういうことだ?」

GOLD「……。はい、私たちとは人類……多くの人々の事です。神に見守られし多くの人間に幸を与えんとする為、善意の募金を今一度」

レッドパス「神に見守られているならば、知らない他人に頼るより、神に頼って募金してもらえばいい」

GOLD「はい。神は誰しも人々の内に存在するもの。誰しも神と一体なのです。ですから、神にお願いし頼るように、貴方様へもお1つお願い致したい」

レッドパス「……、ならば、他人の神様などに頼らず、自分の中の神様だけ相手にしろ」

GOLD「……。どうか貴方も、私たちへ募金をお願いします。さすれば貴方へも神のご加護が……」

レッドパス「神という空想に頼らず、自分の力で這い上がって来い」

 GOLD、顔を伏せる。
GOLD「……それは、神への冒涜ですか……?」

 レッドパス、冷静な目つきで相手を見据える。
レッドパス「……?」

GOLD「それは神への冒涜ですか!!!!」
 GOLD、豹変した形相で、叫びながら襲い掛かる

 GOLD、撃たれる。

レッドパス(感情に流され、豹変してばかりの人間たちだな……)

■『腐市警察官の仕事』

<場所:腐市>
<登場人物: 男性A、腐市警察官K1,K2>

 自宅の縁側に座るAに、警察官(K1)が近づいて言った。
「すまねぇがトイレを貸してくれ。――それと、これ持っててくれ」
 Aにバッグをよこして、慌ててトイレへ駆けて行く。

 まもなくK2が訪れた。
「ちょこっと失礼……」
 K2はAの隣に座り込んで、話をし始めた。
「ここら辺で麻薬密売をしているとの噂を聞きつけたが……、何か知っているか、お前?」
「いいえ存じません」
「本当か……?」
「はい、そのような噂は今の所、少なくとも私の耳には、全然……」
「……それでは、そのバッグの中身を、なんと説明付ける気だ?」
「いえ……このバッグの中身は、私は知らないんです。先ほど、トイレを貸してくれと入ってきた警察官が置いていった物ですので」
「……事情はともかく、そのバックの中身を見せてくれ」
「ああ、はい、分かりました」

「ん! これはッ……」。
 バッグを上下逆にして、中身を吐き出すと、出てきたのは白い粉をビニール袋でパッケージした、いかにもな代物。

 「これは、麻薬じゃないか……! いや、あとで白い粉の成分を調べなきゃ、断定はできんが……まず、形からして、ほぼ確定でいいだろう」
 調べる前に確定した。
「へぇ…………」
 男に手錠がかけられた。
「署まで、同行願おうか?」
「冗談じゃないですよ。お門違いですよ、それは。そのバッグは先ほどトイレを借りに来た警察官のものだと――」
やめろ!
 お前の話は信用できない。そもそも、警察官に罪を擦り付ける、その根性が、気に入らん。馬鹿者ッ!」
 K2が、殴る。そして、しょっぴかれた。

    *

 先ほどの腐市警察官、K1とK2がいる。
 Aから没収した白い粉の詰まったバッグを、K1へ渡している。
「今月のノルマまで、あと何人だっけか?」
「あと13人ほどだ。ほら、休んでないで、テキパキしょっぴくぞ」

■『たむろ』

<登場人物メモ:緑髪、青髪、虹髪、黄髪、桃髪>

 道を進んでゆくと、若者達がたむろしている。右の端だけ一人分通れるスペースがあるだけだった。
 若者はそれぞれ、緑髪、青髪、虹髪、黄髪、桃髪のカラフルな頭をしていた。
 レッドパスがそばを歩いて通り過ぎようとする時、一人の若者が不用意に罵声を発した。

緑髪「おい! そこの歩いている奴、止めろ!!」
 レッドパスがじろりと視線だけ緑髪をとらえながら、そのまま進んでいく。
青髪「ちょっと、君、ここ通んないで、回り道してもらえませんかね」
緑髪「ちッ……」
 青髪はヘラヘラしながら喋り、緑髪は舌打ちしつつ、しかめっ面でレッドパスを睨んでいる。
緑髪「困るんだよな、そういうの。全くッ……。?!」
 いきなり、レッドパスは緑髪を喉を打ち込んで気絶させた。
レッドパス「お前は、人の話の相手に、ならない」
 青髪、虹髪、黄髪、桃髪は拳銃を取り出す仕草をした。

レッドパス「やめろ…… もし人に銃口を向けるつもりならば……、殺される覚悟が、ある時だけだ」
黄髪、桃髪「!?」
 拳銃を取り出し、レッドパスに銃口を向けた黄髪と桃髪は、倒れた。
 それぞれ頭部と胸に銃弾を食らっていた。レッドパスの拳銃から煙がゆらめく。

青髪「銃を捨てろ」
レッドパス「まだ、繰り返すのか……?」
 青髪は銃口を向けた。
 青髪の頭部に風穴が開いた。青髪がその前に発砲したが、レッドパスとは別の位置へ飛んだ。
 青髪の身体は崩れ落ちた。

虹髪「…………」
 銃口を向けずに、虹髪はじっと睨んでいる。
レッドパス「……」
虹髪「銃を捨て、自首してください。素直に従わなければ、私もまた、貴方へ向かって、拳銃を向けなければならない」
レッドパス「――それ以前に、他の者は行動を慎めば良かっただけの話だ。オレは、オレに危害を加える者を排除する」
虹髪「……しかし、それなら最初に緑髪の野郎へ攻撃したのは……。あの喉を打ち込まれて倒れた奴は――、あいつは、貴方へ危害を加えていないはずですが?」
レッドパス「確かに、表面上の暴力の面ではそうだろう――。
 積もり積もった言葉の罵声の方が、他人を苦しめる場合もある――。あの人間には、それ相応の罰を受けてもらうため、ひとまず気絶させた。

虹髪「いったい、何様だ……ッ」
レッドパス「――。うぬぼれているか? という意味ならば、それはお前の仲間に言うんだな」

 レッドパスは緑髪へ近づいていく。
レッドパス「気道が狭いままだ。少し戻す」
 レッドパスが緑髪へ触れようとした時、
虹髪「触るな!!」
 レッドパスがじろりと虹髪を睨む。
レッドパス「喚くな虹髪。事態を悪化させたくなければ、余計な行動はしない事だ……。断っておくが、こいつを殺す気は、さらさら無い」
虹髪「……」
 レッドパスは緑髪の気道を確保した。
レッドパス「程よい報いを、もう受けているようだ、な」
虹髪「……?」
 レッドパスは立ち去った。

    *

 その後、目が覚めた緑髪は、蚊の鳴くような声でしか喋れない自分に気づく。

■『非暴力な平和的な尋問』

<場所:取調室>
<登場人物:警察官B、容疑者A>

 B、大声で怒鳴るばかり。
「分からねぇってなんだ!! 分からねぇって答えはねぇんだ!! ああ??
分からねぇって答えはねぇんだ!! おい? あかんぞ!! お前!! 黙ってたらな!! お前!! 言い逃れできると思ったらあかんぞ!! ああ?? お前!!」

 暴力は振るわないが、叫び散らすB。Bの喉とAの鼓膜が痛んできた。

 Bは、Aの胸倉をつかみ、首を締め上げる。
A「やめてください」
B「ああ!!!?? だったら答えろや!!! 何か言えや! コラ! ああ!! ぶち殺すぞ!!」
A「……だから…………、分からないんです。本当に……私は、知らなくて……、知らないから答えられなくて………… それとも、嘘を作らなきゃいけないんですかっ……」
B「誰がそんな事聞いたんや!! オレは白状しろって言ってんだッ!!!! 嘘なんか作るな! 本当のこと言え!!!」

 取調室近くの茂みに、レッドパスが横になって耳を澄ましていた……
レッドパス「……」 //顔絵:険しい顔

    *

 いつものように仕事を終えて、帰宅途中のB。
 闇の中に、赤い帽子がちらりと見えた時、Bは息絶えて倒れた。頭部に銃弾の跡。

 その時レッドパスの前に、Bの同僚のCが現れた。
C「残念な事をしました。貴方が処罰するべき人物は、この人ではなかった」
レッドパス「……?」
C「この方――、Bという名の男ですが、彼は追い詰められていたのです。上司から、次に成果を出さなければ、お前のいる場所は無い、などと言われ、切羽詰っていたようです。ですから、あのような過激な行動に……」
レッドパス「……」
C「……上司はDという男です。……残念です」
レッドパス「……」
 終始じっとCを見据えたままのレッドパス。
C「……」
レッドパス「……話はそれだけか」
C「えっ」
レッドパス「オレは、対象人物を間違えた事は無い」
C「しかし、Bにはああいう行動をせざる得なかった理由があるんですがね? それを無視して良いのでしょうか?? レッドパスさん?」
レッドパス「理由を付けたところで、奴が愚か者であったことに、変わりは無い」
C「D氏については…… 上司のD氏については……?」
レッドパス「お前の話だけで判断する事ではない。その人間が愚か者かどうかは、俺が判断する事だ」
C「……」
 レッドパス、振り向いて、去っていく。
C(……残念です。やはり結局はただの独裁者程度の器…… 仕方ありません。話せるお人だと思ったのですが……)

 C、銃を取り出して、瞬時にレッドパスへ狙いを定めて撃つ。
 後頭部に命中した…… が、大してダメージを与えられた様子が無い。
C「……!? が!?」
 即座に振り向いたレッドパスは、Cの胴体を撃ち抜いた。Cが気づいた時には銃口が既にこちらを向いていた。
 Cが怒鳴る。
C「クソッ!! 何でだッ! お前が死ぬべきだろうが!! 私が生きるべき人間――」
――Cの頭部に、弾丸が命中した。銃口から白煙が上がる。
レッドパス(愚か者、排除……)

    *

 後日。上司D、朝の通勤時。
 列車の切符を買おうと財布を取り出した際、財布が勝手に弾き飛ばされ、その後発火した。中身を含めて灰になった。

■『レッドパス vs ノロ』

<場所:ゲドク社の見える丘>
ノロ「――」
 丘の上から遠く離れたゲドク社を直視するノロ。

 手元にはゲドク社ビルの見取り図に、レッドパスのレントゲン写真。レントゲン写真を眺めながら考えている。
ノロ(埋め込み式防弾チョッキ、の、ようなものか……)



<場所:ゲドク社>
 レッドパスはゲドク社の幹部と、最上階の会議室にいた時だった。

 突然に爆音と震動。間を置かず銃声多発。
 階下や廊下から、けたたましい声が聞こえる。


<場所:煙だらけの廊下>
「伏せろっ! ――どこだ!? どこから撃ってきたッ!?」
「煙がっ、視界が悪くて、何も分かりません!!」

「ぅがッ!」
 誰かがやられた。誰かが発砲した。視界が悪い中でも、発砲時の閃光《せんこう》は見える。
「撃て! 光った位置を狙え」
 乱射した。
「やめろーッ! 違う、敵じゃ無い!」
 あちこちで叫ばれた。


<場所:会議室>
 辺りは静かになった。
「どうやら終わったようですな」
「どれ。出て行ってみましょう」

 会議室から出て、廊下を下り、階下へ降りる。
「これは…………」

 射殺されたゲドク社のメンバーが散らばっている。

 突然ガラスが割れた。銃弾が複数撃たれた。

 全員、頭を撃ち抜かれて死亡した。バタバタと倒れてゆく。と思ったら、一人起き上がった。レッドパスは無傷だ。

レッドパス「……」

 銃弾の飛んできた方を見た。
 その時もう一発の銃弾が飛んできて、今度はレッドパスの右目に命中した。しかし銃弾は弾き飛ばされた。レッドパスは床に伏せた。
ノロ「!?」

 レッドパスは姿勢を低くしたまま、廊下を進み、階段を下りていく。

レッドパス(やはり奴が……。2発目ですぐオレの目玉を狙ったのは……、オレの身体に装甲板が仕込んである事を、もう奴には知られているという事か?
だが、奴もこの無色透明な防弾ゴーグルまでは、見抜けなかったらしいな。


    *

 左手に拳銃を持ち、階下へ慎重に進んでいくレッドパス。
レッドパス(もしや、遠くからの狙撃が駄目だと判断して、近距離攻撃に切り替える可能性は? だとしても――)
 懐から刀を取り出し、右手で持って構える。
レッドパス(この伸縮自在な「痛血野《いたちの》」を用いた剣術には、奴でも敵うはずは無いッ……)
 たくさんの仲間の死体を進んできて思う。
レッドパス(このゲドク社は、まだまだだったな。ノロ一人に壊滅させられてしまうようじゃ、な……
オレの複製人間をここにも配備してもらえば、こんな簡単にやられはしなかったんだが。


 玄関まで来て、外に出た。
 薄暗い中、真正面にただ一人立っている者の姿がある。
レッドパス「ノロ! やはり貴様か。貴様が、1人で――」

 ノロは斜めに倒れながら、構えた突撃銃でレッドパス目掛けて撃ち放った。
 銃弾はレッドパスの開いた口を下方から通過し、後頭部側の装甲板に反射して、脳幹に直撃した……

 倒れ掛かったノロの身体が地面に到達した時、レッドパスの身体は後ろに揺らめいて、後頭部から地面に激突していた。もう微動だにしない。

    *

 ノロはガソリンの入った携行缶を持ってゲドク社ビルへと入っていった。

 ノロが立ち去った頃には、ゲドク社はそのメンバーの死体と共に炎を燃え上がらせていた。

    *

 数日がたった同じ土地。骨と灰になったレッドパスの亡骸《なきがら》を見下ろす、もう一人のレッドパスがいる。

レッドパス「いたちごっこだな、ノロ。
 人間を改良しない限り、
 レッドパスだけ殺し続けても、意味は無い。
 その素材ある限り、第2、第3のレッドパスは、どこにでも生まれ得る……


グシャリ……
 レッドパスはレッドパスの亡骸を踏み潰した。

最終章:ラストエンド

■『仮想の家屋』


<この場所に来るまでの通路で、プレイヤーキャラクターはレッドパスからいつの間にかメフィストに変わっている>

−1−
 メフィストは世界の奥底に来ていた。
 そこには仮想の家屋と名付けられた、どこか奇妙で、不思議で、懐かしさ漂う空間がある。
//幼い記憶の中に見覚えのあるような感じもする光景、既視感(デジャビュ)。

 入っていくと、やつれたハバネロが畳の上で寝ている。その顔は、メフィストの記憶の中に存在する。だが、誰なのか分からない。気配に気づいて起き出すハバネロ。
ハバネロ「メフィスト……? メフィスト! はぁぁ、良かったぁ」
 メフィストの頭をガシガシつかむ。
ハバネロ「……わたしより先に早死にするんじゃないよ」

ハバネロ「ゲゴッ、ゲホッ……ゲホッ……」
 脇を向いてセキをする。その後、横になる。
 ハバネロの顔は青ざめている。息が、浅い。何か酸っぱい臭いがしていると思ったら、近くに嘔吐物《おうとぶつ》がある。アリやゴキブリ、クモ等の虫がうごめいている。
 うごめく虫から距離を置くメフィスト。

ハバネロ「わたしの毒でわたしがやられた。今、死に逝く時。メフィスト、一目会いたいと思っている時に会えた。なかなかのグッドタイミングだったぜ」

 メフィストはその後、建物内を探索するが、先へ進めるような箇所が無い。よく分からないが、バールが目立つ所にあったので、拾って持ち歩いている。

 なすすべ思いつかず、ハバネロの寝ている畳に腰掛けて、ぼんやりしている。
ハバネロ「メフィスト、前にも言ったと思うけれど……、わたしのそばにいると、死んじゃうよ」
メフィスト「……なぜ?」
ハバネロ「わたしが猛毒体質だから」
メフィスト「……」
ハバネロ「次の世界へ、メフィストは行くんだろ……? だったら進まなきゃ。滅びない為にも」
メフィスト「だから、その進む道が、見当たんないの」
ハバネロ「メフィスト、キミの座っているこの畳を見て御覧《ごらん》。とくに縁《ふち》の方を」

 畳をじっくり眺めた。縁の一箇所、へこんでいる。
メフィスト「……」
 手にはバールを持っている事に気づき、そのバールの先を、へこんだ箇所へ突っ込んでみる。そして畳を引き上げた。――果たして、畳の下は道があった。穴が開いており、縄ばしごが続いている。

ハバネロ「やっぱり、どおりで、寝ていても背中がスースースースーするんだもん……。全然身体が回復しなくて参っちゃっていたところ」

 そう言いながら、顔が今度は病的に赤くなって、ふらついて床に倒れこんだ。
 メフィストがハバネロの額《ひたい》に手を当てると、お風呂のお湯くらいの温度だと主観的に分かった。

メフィスト「熱い。寝てなくちゃ」
ハバネロ「オーオ、優しいね……。でも、この発熱は問題じゃない、んだ……。すぐに……、勝手に収まるし……、収まったところで、他の症状が出てくる…… 発作のようなもんだな。
――先へ行こう。

 唐突に、ハバネロは転がりだして、畳の下の穴へ落ちた。
 メフィストは驚いて、縄ばしごを伝って、後に続く。



−2−
 降りた先は、下水道のようだ。腐った卵の臭いがする。
メフィスト(さっきの人は……?)
 ハバネロは枝のようなものを杖代わりに、先をゆっくり歩いている。
メフィスト(……、死にそうな割に、頑丈そうだね)

 追いついて話しかける。
メフィスト「具合悪いなら、寝ていたら――」
ハバネロ「寝込んでいても、死を待つだけだから……」

 メフィスト、ハバネロの顔をじっと見る。
ハバネロ「ん〜?」
メフィスト「前に、私と、会った?」
ハバネロ「えー、覚えてないのか。……そっか、どこか遠くに置いてきたのか、記憶」
メフィスト「……?」
ハバネロ「まあいいや細かいことは――。名前だけ覚えてくれたらそれでいい。わたしの名前はハバネロだ」
 ハバネロがセキをする。
メフィスト「私は」
ハバネロ「メフィストだ。知ってるともキミの事は。メフィちゃんだな、うん」

 ハバネロは深呼吸する。
ハバネロ「先、行って」
メフィスト「え?」
ハバネロ「わたしの毒が届かない範囲まで」
メフィスト「……ああ」
 2人は離れて歩く。

    *

 ガン、カン、ガン、カン……
 金属音の足音が、背後から近づいてくる。振り返る。
 赤い血しぶきを浴びた大男が、歩くたびに鉄ゲタを鳴らしながら、包丁片手に近づいていた。
 目を凝らすと、包丁大男の背後に、人の形らしい赤い物が横たわり、痙攣《けいれん》していた。

 ハバネロは走り出した。まともに走れない為か、進む方向は左右にぶれ、スピードも急ぎ足程度のものだった。それでも歩いているメフィストの所まで追いつき、言う。
ハバネロ「逃げて。走って」

 メフィストは後ろ見る。包丁大男はこちらへ走り出していた。メフィストも驚いて走り出す。その時、足の遅いハバネロの腕を自分の肩に回し、肩を貸しながら走った。

 だがその状態で100mも持たなかった。ハバネロはメフィストの手を払って、離れる。
ハバネロ「そのまま逃げて」
メフィスト「何? どうする?」
ハバネロ「一か八かで、訳を聞いてみる…… どうしてわたしたちを追うのか、を」
メフィスト「……危険なだけだ」
ハバネロ「それは命の危険? だとしても、わたしの寿命は今日明日に尽きるから……どっちにしたって変わりゃあしない……。早く逃げろメフィスト!」

 メフィストは少し逃げるが、そこで立ち止まる。
 ハバネロは包丁大男の方へ向き合う。

包丁大男「ぉぉおおおぉぉぉおおお」
 口からノイズを発声しながら、迫り来る。
ハバネロ「ちょっと待て! 大男さん、なぜわたしたちを追うの?」
包丁大男「ぁぁぁぁあああああ?」
ハバネロ「包丁を持ってどうするのさ?」
包丁大男「うぐぅぐぅぐぐささいい」
ハバネロ「わたしたちは、敵じゃ無いぞ! 止まって!」

包丁大男「あんあ? ぐばばばば」
 無気味に笑う、包丁大男。血に濡れた大きな包丁を両手で構えた。
ハバネロ(こいつ、わたしを殺す事しか頭にないんだね……)

 包丁大男がついにハバネロのいる位置にまで到達した。
 ハバネロは息を吐く。
ハバネロ「――わたしは、メフィストを守れれば、本望――」

 包丁大男が包丁で突く動作の前に、ハバネロが飛びついた。ハバネロの大きく開けた口から、犬歯《けんし》が煌《きらめ》いていた。

 ハバネロは刺されながらも、相手の首を強く噛《か》んだ。ハバネロは投げ飛ばされ、壁に激突し、動かなくなる。顔にはどんよりとした影が差し、腕は力なく下がった。

 包丁大男はハバネロの毒が回り、錯乱状態になっていた。周りが見えておらず、メフィストとは逆の方向へデタラメに足を動かして走り出し、壁に当たるたびに頭をぶつけながら、ずっと奥まで走っていった。ずっと遠くで奇声が鳴り響く。

    NEXT

■『ゲームエンド』

 真っ暗な劇場にメフィストただ一人。正面のスクリーンが、青白く輝いていた。

 舞台の袖《そで》から、見知った顔の女性が出てきた。
メフィスト「ハバネロ、なぜそんな所に」

ハバネロ「――以上を持ちまして、本日の世界は終わりを迎えました。
 今宵《こよい》、お帰りの際は、足元の闇にお気を付け、
 またいつの日か、再びお出で下さる様、心よりお待ち申し上げております――
//顔絵無し。もしくは、目を改変した画像や、暗くした画像
 メフィストの声は届いていないようだった。
 目が死人のような印象を与え、声は機械的な、淡々としたものだった。

メフィスト「ハバネロ……?」

<効果音:ブレーカーを落とすような音「クァタン」>
 青白いスクリーンの輝きは消えた。


<場所:自室>
ゲーム機「……ジジ……ジ…………
ギギ……ギ……

 ゲーム機を前に、コントローラーを握ったまま座っていた。
 画面には砂嵐のノイズが映るばかりだった。

メフィスト「……ゲームは終わった」

    *

メフィスト「?」
 ゲームカセット「愚人の街」が、ゲーム機に途中までしか差し込まれていなかった。
メフィスト(砂嵐なのは、このためか)
 しっかり奥まで差し込み直し、電源を入れる。

<インベーダーゲームの画面が現れる>
メフィスト「?」
 ふと、ゲームカセットのラベルが一部めくれている事に気づく。全部はがしてみると、その下にはインベーダーゲームのラベルがあった。

 何か違和感を感じ、しばらく考え込んだ。
メフィスト「……」
 その後、考えるのが面倒くさくなったのか、メフィストはそのゲームをやり始めた。
 30分程やった後、飽きて、電源を切った。すぐ眠たい気分になった。

    NEXT

■『夢の後』

 いつものようにベッドで寝て、いつものように夢の中。
 けれど、その日の夢は、歪《いびつ》だった。
 ねじれて、崩れて、崩壊が始まっていた。

ハバネロ「こっちだよ、メフィスト」
 ハバネロがいる。元気そうだ。
メフィスト「大丈夫だったのか?」

 ハバネロがゆがんで見える。
メフィスト「ハバネロ……?」
ハバネロ「あっちの世界のわたしは……もう駄目だな。……こちらの世界のわたしは、まだなんとか……。さあ早く、こっちだ」
 駆け出した。

 空間に亀裂の走ったこの世界をめぐる。どこかの民家に入って、暖炉の中、その下を外して中に入った。縄ばしごの下に揺らぐ空間があって、そこに落ちた。
 同じ世界の似たり寄ったりな風景の場所へ落ちた。すぐにハバネロはまた駆け出して行く。金属の骨組みだけの塔へ登り、金網の上を走っていく。途中、濃い雲の中へ突っ込んだ。
 気づくと雲の上を裸足で駆けている。雲の上にあった、真っ白いコンクリの宮殿へ入っていく。中は何の装飾も無い、真っ白い空間で、その中をハバネロは、スロープのような坂を、上へ上へと進んでいた。
 メフィストも後ろから追いかけ、ハバネロに追いつく。メフィストが急がず歩く速さでも、ハバネロを楽に追い越してしまう程に、ハバネロの進むスピードが落ちている事に気づいた。

 メフィストが待っていると、ハバネロが追いついて、メフィストの背中を押した。
ハバネロ「ここから先は、キミ一人で行くの……!」

 メフィストは振り向く。
ハバネロ「だいじょうぶ。ここを登りきった先が、終着点だから」

 メフィスト、歩き出す。数十歩、歩いたのち、振り返る。ハバネロは坂を下《お》りようとしている。
 メフィストはハバネロの所まで戻ってくる。そして、腕をつかんで、上へ登る。
メフィスト「一緒に、行かにゃあア……」
ハバネロ「……」
 ハバネロはポケットから煙草を出して口にはさむ。
ハバネロ「わたしは無理だよ」
 ぽつりと喋りながら、ライターを取り出して煙草に火を当てた。
 ハバネロは目をつむったまま、メフィストに引っ張られて、坂の最上まで進んでゆく。

 最上へ近くなる程、辺りは霧に包まれ何も見えなくなる。
 それでもメフィストの足は進んでゆく。段々と意識が遠くなる。
 ハバネロの吸う煙草の、赤い火だけがよく見えた。
ハバネロ「メフィスト」
 メフィストの左手に何かが握《にぎ》られた。
ハバネロ「わたしが手伝ってあげれるのは、ここまで……」
 ハバネロの体重が減少してゆく。
 そして、メフィストの意識は失う。気絶したまま足だけが動いているという不思議な状態で、坂の最上、終着点へ到達した。



<場所:自室>
 起き上がって、ベッドから降りる。
 夢は覚めた。
 気のせいか、煙草の臭いが漂う。

 左手が重い。
メフィスト「え?」
 左手に握られていたのは、真っ白なハンマーだった。

 右手がまだ握りこぶしになっている事に気づき、手を開く。
 その手から、紫煙が、立ち上る――
メフィスト(ハバネロ……)

<ベッドを調べようとすると>
 湿ってカビが生えた。悪臭もする。寝るのはやめる。

エンディング


−1−
 メフィストは閉ざされたはずの自室の扉を開けて、玄関の扉も開けた。
 以前から外に広がる何も無い自宅周辺。
 行ける所まで行き、真っ白な空間の端にある壁にぶつかった。
 そこがこの狭い世界の果てなのだと思っていた。が――

 メフィストは手にした真っ白ハンマーで、壁を打ち付けた。ヒビが入った。さらに何度も打ち付けた。
<効果音:軋み、歪み>
<効果音:ガラスが割れる音>
……ミシ、ギシ…… カチリ………… ガシャンカラカラカラ……

 ガラスが割れて落ちるように、壁は崩壊した。
 それと同時に排気ガスの臭いが、鼻を突く。
 黒い雨が降り出した。空のあちこちに、暗い紫色の雨雲が現れていた。



−2−
 そこはコンクリートシティ。仄《ほの》暗い灰色の街。
 往来を、灰色の人ごみが行き交う。
<人に話しかけても一切反応は無い>

 街にはゴミが散乱し、紫や緑色をした川には時々赤い物が流れている。
 ビルの上から飛び降り自殺をしてくる風景に、行き交う人々は違和感を持たない。


 住宅地。
ゴトゴトゴトゴト……
<効果音:振動音。洗濯機が動作し揺れているような騒音>
 洗濯機の騒音が常に響き渡る。洗剤の泡混じりの家庭排水が川を流れる。
 誰かと誰かがペチャクチャ喋る。時々、ベバババババ!!と大きな音でうるさく笑う。
 どんよりとした歩き方で近づく灰色の老人が、うるさく笑うものを金属片で切り裂く。
 うるさく笑うものは、息絶えるまで雑音と嘲笑を発声した。
 先ほど、金属片を持った灰色の老人は、飛び降り自殺した者と激突して死んでいた。


 工場地帯。
 水銀のような、ぎらぎらした産業廃棄物が下水へ流れていた。
 工場内は、顔色を悪くした従業員ばかりだった。
 建物の隅《すみ》に毒々しく紫がかった山がある。
 近づくと、元は従業員だった死体の山だと知る。
 そして1、2人、狂った従業員が、その死体から肉片をちぎって食って、うめいている。
 傍《そば》を見ると、1人の子供が排水の中を泳いでいる。1人の子供が排水を飲んでいる。腹はたるむように膨らんでいた。


 学校。
 教師に腹を立てた生徒が、カッターナイフを取り出し、なぜか教師ではなく、隣の生徒の目を突き刺した。
 パニックになった教師は、イスを持ち上げ、カッターナイフを持った生徒の腕を叩きつけて、カッターナイフを取り除いた。が、その後も、その生徒の頭、顔、特に目を、殴り続けていた。
 周りの生徒はしばらく固まっていたが、やがてその事態も気にならなくなった。一部は無駄話、馬鹿話を始めた。また一部は、教室から勝手に出て行った。


−3−
<視点:家の前>
 家に戻ってきた。
 メフィストは家の中に入る。その後、独りでに玄関の扉が閉まる。
<効果音:鉄格子を閉じるような音「キィィィ、ズタァァァーン」>

<スタッフロールが流れつつ、以下の光景>
 家の前を、ノロが左から右へ歩いてゆく。
 その後、ハバネロも歩いてきて、玄関の前でいったん止まり、メフィストの家の方を向く。
 しばらくして、また歩き出し、去っていく。

<スタッフロール終了後、暗転>
<右下に「THE END」をフェードイン。5秒停止。タイトルへ戻る>

        THE END

<◆もし、「作られた現実」というアイテムを持っていたら、以下のシーンを追加>

<『アイテム「作られた現実」を実行しますか?』
 はい/いいえ
 "はい"を選んだ時、以下を実行。"いいえ"ならばタイトルへ戻る

−4−
 家の中に入り、自室の扉を開けると、誰かがこちらを背にして、イスに座っていた。
 イスが回転し、相手はこちらを向く。
メフィスト「ハバネロ……?」
ハバネロ「……」
ハバネロ「……目の前の世界に、とらわれるな……!」

 ぐにゃりと、視界がねじれた。
<エフェクト:本を閉じるかのような画面効果>


 場所が変わった。だがメフィストの自室にいる事は変わり無い。ただ、どこか明るかった。
 両手の上には本がある。ハバネロという架空の人物が登場する本が……
メフィスト「……」

母「ゴハンデスヨ」

 下の階から声が聞こえた。降りてみると、人形のような形相《ぎょうそう》をした中年女性がいる。胸に名札が付いており、そこには「メフィストの母」と書いてあった。

 テーブルの上にご飯、味噌汁、キュウリの漬物、干しブドウがあった。
 ありがたく食べる。少し食べて、おいしく食えるものだと確かめたのち、全部食べた。

 しかし、この、名札の付いた母は、メフィストの記憶には無い。
 かと言って、メフィストに母の記憶がある訳でも無い。

 今日は自由らしい。とにかく登校日とか出勤日では無いらしい。
 外に出ようとした所で、名札の付いた母が声をかける。

母「散歩? モシ商店街ニ行クナラ、玉ねぎヲ、買ッテキテ。手頃ナ大きさノヤツ、1コ」
メフィスト「玉ねぎ? 分かりました」
 母は165円を、メフィストの手に落とした。


−2−
 明るい商店街。町の名はアスファルトシティ。
 みんな、笑顔だ。でも、その笑顔はどこか無気味だった。

 居酒屋の前で知らないおじさんが声をかけてきた。
「よォ、メフィちゃん。新作のこんにゃく芋焼酎、どうだ飲まんか?」
「いいえ、飲みません。私は未成年ですから」
「ははは、そうだっけな。昨日も言ったっけもんな。いつもワンパターンですまんな」
「?」
「どうしたい? まだ頭痛続きか?」
「え……」
「まあ、くつろいでいけよ。ここの連中のにぎやかさが、クスリになるぞ」
「はい……。ところで玉ねぎ売ってますか?」
「オレは居酒屋のおやじだからねえ。玉ねぎは八百屋だな。……って、メフィちゃん、大丈夫か! そんなに頭痛がひどいのか? ……ん、それとも珍しく、今のはジョークでも言ってくれたのか!?」
「いえ……」

 その場を離れた。
メフィスト(今の人、私を知っているようだが……誰?)

 八百屋を見つけ、玉ねぎを買う。
 またも昔からメフィストを知っているかの様子で、「またいつかスイカ割りしようね」と言われた。


−3−
 とても不安な気持ちになって、何かか逃げるように、どこか遠くへ走っていた。
 走り続けた先に、広く開けた場所に出た。海……のようだ。
 だが、真っ黒だった。原油ような液体で、鈍い照り返しを見せた。

 道を引き返す。
 分かれ道。その一方が、先まで見えるのに、途中で何もなくなっている。
 意味が分からず奇妙に思い、そちらに進む。
 道路が途切れている。だが途切れた先には何も無い。下に地面がある訳でも無く、ただ深い闇が広がっていた。
メフィスト(危ない……)
 直感的にそう感じ取り、引き返す。

 電信柱にポスターが貼ってある。映画のポスターらしい。
 大きな字で「バイオレンスアニメ」と書いてあり、レッドパスが映っていた。
メフィスト(レッドパスも、この世界では架空の人物か……)

 逃げ道を塞《ふさ》がれた気分だった。



−4−
 帰宅した。

母「オカエリ」

 名札の付いた母の顔は、人形としての顔を露《あらわ》としていた。
 夕闇が斜めに照らす。その顔が、いっそう無気味だった。

「ヤツレテイル。――オヤスミ」
「え?」
「フトン シイテオイタワ スコシ ヤスミナサイ」
「ああ、はい……」

 部屋に入った。
 床に落ちていたハバネロの登場する本を、しばらく眺めていた。

メフィスト「これで、よかった…………?」

 本に描かれたハバネロが、こちらへ視線を向けている。

        TRUE END ?

■キャラクター紹介■

顔グラフィック
刃沼メフィスト
主人公の一人
顔グラフィック
レッドパス
破壊の人
顔グラフィック
ノロ・ファウスト
謎の人物
顔グラフィック
ハバネロ
猛毒体質

■ふりがな並べ■

喋る《しゃべる》 慎む《つつしむ》 喚く《わめく》 睨む《にらむ》 嘘《うそ》 閃光《せんこう》 嘔吐《おうと》 痙攣《けいれん》 煙草《たばこ》 紫煙《しえん》 握る《にぎる》 往来《おうらい》 仄暗い《ほのぐらい》 隅《すみ》 傍《そば》 袖《そで》 露《あらわ》 隣《となり》 独り《ひとり》 塞ぐ《ふさぐ》 直に《じかに》 覆う《おおう》 掴む《つかむ》 覗く《のぞく》 血塗れ《ちまみれ》 随分《ずいぶん》 塊《かたまり》 這う《はう》 滴る《したたる》 血糊《ちのり》 眉間《みけん》 澄ます《すます》 貴方《あなた》 眼鏡《めがね》 拭く《ふく》 喉《のど》 裂く《さく》 詫びる《わびる》 隙《すき》 設え《しつらえ》 放る《ほうる》 轟く《とどろく》 羽交い絞め《はがいじめ》 和らぐ《やわらぐ》 捏造《ねつぞう》 荒む《すさむ》 屠殺《とさつ》 白髪《しらが》

■注解■

トミーガン……トンプソン・サブマシンガン。短機関銃(サブマシンガン)の一種。
突撃銃……アサルトライフルの事であり、ライフル銃の一部を差す総称。

2010/12/31
ワイヤー・パンサーの空想空間