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ある少年のはなし

 ある少年はいじめにあい、引きこもる。少年はそのとき小学生だった。
 一日中、暗い部屋の中にいた。唯ぼんやりしていた。
 少年には友達がいなかった。誰も心配してくれなかった。
 小学校を卒業するまで一度も登校しなかった。
 少年は中学生になっても学校へ行かなかった。
 一日中、部屋の隅っこでうずくまっていた。
 次第に少年の父母は機嫌が悪くなって行った。そしていつしか少年は虐待を受けていた。
 少年は自分の部屋にこもった。
 毎日毎日怯えていた。
 ろくに御飯さえ食べさせてもらえなかった。
 少年の体はみるみる痩せこけた。
 肉体的にも精神的にも疲れ果てた。
 そのころから少年は幻覚を見始めていた。二十四時間、父と母の虐待を受けている幻覚だった。意識がもうろうとした。

 ある日、家に誰もいないとき。
 少年は唯ぼんやりとしていた。
 タンスの裏に何かあることに気づいた。
 タンスの裏にあったもの、それは、白い粉が入ったビニール袋だった。
 その粉からは甘い臭いがしていた。
 少年はそれを吸った。気持ちが穏やかになった。
 それから少年は苦しい思いをする度にその粉を吸った。
 一日一回吸っていたが、それでは物足りなくなり、一日一回が二回、四回、しまいには一日十回以上も吸うようになっていた。

 二週間後、粉を使い果たした。
 それからの少年はあまりにもひどい苦しみに襲われた。
 朝から晩まで体の震えが続き、そしていつもいつも不安と恐怖を感じていた。
 夜は一睡たりともできない日々が続いた。
 少年の体は衰弱した。
 動くこともままならなくなっていた。
 いつしか少年は夢を見ていた。
 永遠とも言える時間の中、少年は夢の中をさまよっていた。

 父母は、少年の体を捨てるように、土に放り込んだ。
 世の中は何事も無く動いていた。


2006/05/30

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